C22 メンテナンス後のご相談
マッキントッシュ C-22のメンテナンスをご依頼いただき、メンテナンス完了後にご自宅で使われて間も無くC-22に不具合があるとのことでご連絡をいただきました。
ヴィンテージオーディオ堂では、修理・メンテナンス後のご相談にもしっかりと対応します
アンプの不具合症状
C22を接続し音出ししてみたところ、
ボリュームが0位置でもボリュームつまみ位置9時~10時程度の音量があり、音量が下がらない。
環境は、オルトフォンMCカートリッジ→オルトフォンMCトランス→C22 PHONO1→MC60×2→JBL S101
オルトフォンMCトランスは、別にマランツ7→マランツ2に接続して問題なくボリューム調整ができているので、C22に問題があるとのことでした。
当社からお客様に確認したこと(こちらからお送りしたメール文)
音量を絞り切れないことに関して、MCカートリッジの型番 MCトランスの型番を教えていただけますか。
C22のOUT PUT は、MAIN OUT に接続しますが、TAPE OUT に繋げていませんか?(TAPE OUT と MAIN OUT は隣同士です。)
お客様からいただいたお返事
MCカートリッジは
ortofon CG 25 Di MKⅡ
MCトランスは TYPE 0,32M/NO.41
C22のOUT PUT は、MAIN OUT に接続している。
当社からのご返事(こちらからお送りしたメール文)
C22のVOLUMEの件ですが、結論から書きますと、
(趣味のことですので、下記にて詳しく書きました。ご参考までに。)
1 この昇圧トランスをOFFにする/取り除く(カートリッジの出力とプリアンプの感度を合わせるのが普通の使い方です。
C22の入力電圧2mvなのに対して、CG 25 Di MKⅡ は出力電圧が1.5mVありますので、本来は昇圧トランスを必要としないように思います。)
2 昇圧トランスを使用したい場合は、別の昇圧トランスにする(昇圧の低いもの)
3 この昇圧トランスを使用するときは、MC60のGAINやC22のOUTPUTレベル(天板のVOLUME CONTROL)で信号を絞る
のいずれかの選択肢が考えられます。まずは3の方法を試してみてはいかがでしょうか。(音が歪まないようなら)
マランツ7,マランツ2でVOLUMEがコントロールできているのは、
・マランツ2 は最大出力40W MC60は最大出力60W 出力による違い
・スピーカーの能率による違い S101は92dBですので、比較的能率の良い方です。
・パワーアンプの入力感度違い
・プリアンプのメインボリュームの抵抗値カーブによる違い
が考えられます。
記
①音量が絞り切れないこと
CG 25 Di MKⅡ は1kHz 5cm/sec で 出力電圧が1.5mV ある。
C22 のphonoの 入力感度は 1kHzで 2mVで
フォノイコライザの出力は 0.25V(ハイレベル入力の入力感度と同じ)
この時 VOLUME MAXだとMAIN OUTに 2.5V 出力される。
MC60は 入力感度0.5Vで GAIN MAX だと、この時最大出力の60Wになる。
なので、レコードの録音レベルにもよりますが、昇圧トランスなしでもVOLUMEをしぼらないとMC60の入力が大きすぎて歪むかもしれません。
昇圧トランスの昇圧比が120倍なので
1.5mV × 120= 180mV
インピーダンスは、1.5Ω:20kΩなので、内部インピーダンス6Ωは2次側から見ると
80kΩになるので、180×47÷(80+47)=66.6mV
これが プリアンプの入力に入ると フォノイコライザの出力は8.3Vになり
C22は電源電圧が300Vくらいあるので最大信号電圧は100V近くまで扱えるが
VOLUMEで絞らないとトーンアンプ(フラットで10倍増幅)でクリップしそうになる。
さらに、MC60の入力感度0.5Vに抑えようとすると、
0.5 ÷ (8.3 × 10)= 0.006
VOLUMEで1/160に信号を減衰する必要がある。
1kHz 5cm/secの時の出力1.5mVがカートリッジの最大出力ではないし、
スピーカーの能率にもよるが、MC60を最大出力まで使うことはめったにないと
思うので、じっさいにはVOLUMEはさらに絞って使うことになると思われます。
従って、昇圧トランスを使って、MC60のGAINがMAXだと
VOLUMEを絞った時のわずかな抵抗でも信号が減衰しきれない可能性があります。
(C22のVOLUMEの可変抵抗は800kΩですが、左いっぱいに回したときも数Ωから10数Ω
程度の抵抗は残ります。)
この昇圧トランスを使用するときは、MC60のGAINやC22のOUTPUTレベルで
信号を絞ることをお勧めします。
マッキントッシュ C22のヴォリュームコントロールができるようになったとのお返事
MC60の出力を半分の位置にして再生したところ、ボリュームも絞れていい具合に鳴るようになった。
昨晩2時間ほど動作させたところ、MONOもSTEREOもとてもいい音で鳴っている。
MCカートリッジは昇圧トランスを繋ぐものだという先入観があった。
広がりのある素晴らしい音で鳴っており大変満足している。
ヴィンテージオーディオ堂のコメント
② 音質とレコードへの影響
当オーディオ機器の組み合わせは、スピーカーからの音質とレコード盤に悪影響があるかもしれません。
針がレコード盤をトレースする際に、針が動きにくくなります。
プリアンプのphonoの入力インピーダンス(抵抗)は47kΩで
昇圧トランスの巻数比が1:120なので
カートリッジ出力1.5mVの時、
プリアンプの入力は180mVで電流は47kΩで割って3.83μA
電力は入力出力同じなので、電流はカートリッジ側では120倍されて0.46mA
カートリッジから見た負荷インピーダンスは1.5mV÷0.46mA=3.3Ωとなる。
CG 25 Di MKⅡの推奨負荷インピーダンスは100Ω以上なので、負荷インピーダンスが
小さすぎる。電流が大きすぎて針が動くのを止める力が働きすぎると考えられる。
磁石ではなく巻き数の少ないコイルを動かすことで質量を軽くして、針の動きがレコードの溝に追随しやすくしているのがMCカートリッジの長所かと思います。
制動力も機械的電気的に、この系に合わせて設計されていると思うので、負荷インピーダンスが推奨値より小さすぎるのは、針がレコードの溝をトレースするのに悪影響があると考えます。
負荷インピーダンスを100Ω以上にするには巻数比を1:20くらいまでに抑える必要があります。
オルトフォンのカートリッジCG 25 Di MKⅡの仕様は100Ω以上の指定なので(メーカーの推奨値からは離れすぎている)、
Recommended load impedance > 100 Ohm
(現状では3.3Ωとなる)
昇圧トランスの変更をお勧めします。
他にお持ちのSTA-6600は巻数比(昇圧比)が32で、インピーダンスの比が1000なので、
プリアンプの入力インピーダンス47kΩをSTA-6600を通して見ると47Ωになる。
推奨インピーダンスの100Ωに比べると小さいが、
TYPE 0,32M/NO.41の3.3Ωに比べるとかなり良いかと思いますが、
1/2程度ですので、C22のヴォリュームの操作ではほとんど違いが感じられないと思います。
(No41にくらべ音量調整がしやすいと感じられないのではないかと思います。)
③TYPE 0,32M No41とTYPE 0,32M No6600のプリアンプへの入力電圧
昇圧トランス TYPE 0,32M No41を使用した場合
カートリッジCG 25 Di MKⅡの出力電圧1.5mV 内部インピーダンス6Ωは
昇圧トランス TYPE 0,32M No41の2次側から見ると180mV 86kΩになる。
180mVを86kΩとプリアンプの入力インピーダンス47kΩで分圧した63.6mVが
プリアンプの入力電圧になる。
昇圧トランス TYPE 0,32M No6600を使用した場合
カートリッジCG 25 Di MKⅡの出力電圧1.5mV 内部インピーダンス6Ωは
昇圧トランス TYPE 0,32M No6600の2次側から見ると48mV 6kΩになる。
48mVを6kΩとプリアンプの入力インピーダンス47kΩで分圧した42.6mVが
プリアンプの入力電圧になる。
No6600とNo41の場合のプリアンプの入力電圧の比は42.6÷63.6=0.67
電力比は2乗になるので0.45となって、No41にくらべNo6600のほうが出力が半分弱になる。
昇圧トランスNo41、No6600とC22を接続した場合についてこちらにまとめました。
④ CG 25 Di MkIIに適合するオルトフォンの昇圧トランス例
オルトフォンの昇圧トランスST-7の仕様
オルトフォンの昇圧トランスST-70の仕様
オルトフォンの昇圧トランスST-90の仕様
昇圧比 24dBは1:16 No6600(昇圧比1:32 30dB)の半分(電力としては1/4)
このとき昇圧トランスの2次側の負荷47kΩは1次側から見ると184Ωとなるので
MONO CG 25 Di MkIIの推奨負荷 > 100 Ohm に適合する。
昇圧比24dB(1:16)の昇圧トランスを使用した場合
カートリッジCG 25 Di MKⅡの出力電圧1.5mV 内部インピーダンス6Ωは
昇圧トランスの2次側から見ると24mV 1.5kΩになる。
24mVを1.5kΩとプリアンプの入力インピーダンス47kΩで分圧した23.6mVが
プリアンプの入力電圧になる。
これとNo41の場合のプリアンプの入力電圧の比は23.6÷63.6=0.37
電力比は2乗になるので0.138となって、No41に比べ1/7弱になる。
⑤モノラルカートリッジ使用の注意点
モノラルカートリッジの中でも、CG 25 Di MKⅡはカンチレバーが左右のみに動く構造のためステレオ盤のレコードを再生すると音溝を傷めるおそれがあるため注意が必要です。
オルトフォンモノラルカートリッジについて
⑥プリアンプとメインアンプのヴォリュームの設定
マッキントッシュのパワーアンプのGAINを最大の位置にセットして、プリアンプのVOLUMEをかなり下げて使われるお客様が少なくありません。
・日本の住宅事情も考慮すると、最大出力まで使うことはめったにないと思われます。
・特にヴィンテージのマッキントッシュのプリアンプのVOLUMEは2連のものが多く、低い位置では左右のバランスが良くないものが多いように思います。
・ノイズのことを考えると、プリアンプのVOLUMEはある程度上げて、パワーアンプのGAINを絞る方が、信号に対するノイズの割合が小さくなりますので、プリアンプのボリュームの位置 オーディオのS/N比、スピーカーからの音質に良い影響があると考えます。
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